住まいから始める地震対策|家具固定と室内安全のポイント

住まいから始める地震対策|家具固定と室内安全のポイント

わが家の地震対策を見直すきっかけになったのは、「大きな揺れのあと、両親が家の中を安全に移動できるだろうか」と考えたことでした。

母の車椅子や父の歩行器が通る場所に家具が倒れたり、棚の物が床に散らばったりすれば、普段は通れる廊下や出入口も通れなくなるかもしれません。防災用品をそろえるだけでは、家の中の安全までは守れないことに気づきました。

そこでわが家では、寝室や居間の家具固定だけでなく、倒れたときに通路をふさがない配置、介護用品や防災リュックの置き場所、停電した夜の灯りまで見直してきました。

この記事では、家具の転倒・落下を防ぐ考え方、車椅子・歩行器で移動しやすい動線、夜間の停電対策について、わが家で意識していることをまとめます。まず一か所から見直すための参考になれば幸いです。

目次

家の中の危険を減らすと、避難より前に命を守りやすくなる

防災というと「避難」のことを最初に考えてしまいがちですが、地震では、家の中の家具や棚の転倒・落下によってけがをしたり、避難する道がふさがれたりすることがあります。

外に出る前の数十秒で何が起きるかが、命に関わることがあります。まず家の中を安全にすること、それがわが家の防災の土台だと気づいてから、取り組む順番が変わりました。

地震で本棚が倒れ、棚の上の物が落ち、家具が移動して通路をふさぐ危険

地震時に怖いのは家具の転倒・落下・移動

大きな揺れが来たとき、背の高い本棚や冷蔵庫、タンスは横に倒れることがあります。壁際に置いてあっても、揺れの方向によっては室内側に倒れてくるため、就寝中や足元が不安定な高齢者がいる場合は特に危険です。

転倒するだけでなく、棚の上の物が落ちてくること、家具が滑って移動することも、怪我の原因になります。大きな家具がない部屋か、固定された家具がある部屋かで、揺れのあとに動ける状況が大きく変わります。

大きな地震の被害映像で、部屋中に倒れた家具や散乱した食器を目にするたびに、「ここを歩いて外に出られるだろうか」と考えます。とっさに体が動かない状況を想像すると、地震は決して他人事ではありません。

あなたのお宅の寝室で、今夜揺れが来ても自分の上に倒れてくるものはありませんか?

高齢者のいる家は動線の安全が最優先

足腰の弱い高齢者にとって、散乱したガラスや倒れた家具の前では、その場にとどまることすら難しい状況になることがあります。立ち上がる、歩く、扉を開けて外に出る。その一連の動きが安全にできる環境かどうかが、高齢者のいる家では特に重要です。

家具の固定と並行して、「倒れたときに何をふさぐか」という視点で部屋を見直すことが、高齢者のいる家では特に大切です。

普段は問題なく通れている廊下でも、家具が倒れたり物が散乱したりすれば、車椅子や歩行器では通れなくなる可能性があります。

見慣れた部屋も、揺れたあとの状態を想像しながら確認すると、これまで気づかなかった危険が見えてきます。

日常生活の邪魔にならない対策から始める

完璧な対策を一気にやろうとすると、費用も手間もかかり、途中で止まってしまいがちです。まずは寝室と毎日使う通路を優先して、日常の使い勝手を大きく変えずにできる対策から始めることをおすすめします。

寝室では、ベッドや布団の上に倒れてくる家具がないか、出入口がふさがれないかを確認します。就寝中はすぐに動けないこともあるため、家具を固定するだけでなく、寝る位置や家具の向き・配置を見直すことも大切です。

最初から家中を整えようとせず、一部屋ずつ進めることで、無理なく安全を高められます。

小さな一歩の積み重ねが、家の中の安全を着実に高めていきます。

家具固定と配置の見直しで「倒れない・ふさがない」を目指す

DIY好きな浩平と家の中を見直したとき、家具の転倒だけでなく、収納の扉が開いて中の物が散乱し、通路をふさぐ危険にも気づきました。

わが家では、食器戸棚の開き戸には以前からストッパーを付けていましたが、階段下収納も、扉が開けば中の物が廊下に散乱するおそれがあります。

そこで、階段下収納にも開き戸ストッパーを取り付けました。実際の大きな地震で効果を確かめたわけではないため、これだけで十分とは考えず、対策の一つとして使っています。

家具そのものを固定するだけでなく、扉や収納の中まで含めて見直すことが、動線を守る対策につながると感じています。

家具を壁に固定し、出入り口までの通り道を確保した室内

寝室と居間の大型家具から優先して対策する

家の中でまず手をつけたいのは、長時間過ごす部屋の大型家具です。寝室は就寝中に揺れが来るため特に危険で、布団の上に倒れてくる家具がないかを最初に確認することをおすすめします。

家具の固定方法は、家具と壁・天井の構造に合わせて選びます。東京都防災では、最も確実な方法として、壁へのL型金具によるネジ止めを案内しています。

ネジ止めが難しい場合は、ポール式(突っ張り式)器具とストッパー式、または粘着マット式を組み合わせると効果が高くなるとされています。設置位置や方法は、使用する製品の説明書を確認してください。

手で揺らして動かないだけでは、地震時にも安全とは判断できません。

出入口・廊下・トイレまでの道をふさがない

地震後に重要なのは、室内から外へ出るための動線が確保できているかどうかです。玄関、廊下、トイレへの通路に背の高い家具を置かないことが基本です。

家具が倒れて扉に寄りかかると、扉が開かなくなるおそれがあります。特に、廊下の曲がり角や部屋の出入口は、家具が倒れたり移動したりしても人が通れるか、扉を最後まで開けられるかを確認します。

普段の暮らしでは問題のない配置でも、揺れたあとの避難や介助の妨げにならないかという視点で見直すことが大切です。

ブロック塀や屋外の危険も家族で確認する

室内だけでなく、家の周りも確認しておくことが大切です。ブロック塀は、古さだけで判断せず、傾きやひび割れがないか、高さや厚さ、控え壁などに問題がないかを確認します。

国土交通省の「ブロック塀の点検のチェックポイント」も参考になります。

分からない点や気になる箇所がある場合は、建築士や施工業者などの専門家へ相談すると安心です。

カーポートや物置なども、傾きや破損がないか、倒れたり移動したりしたときに玄関や通路をふさがないかを確認します。

自治体によっては、危険なブロック塀の撤去や改修に補助制度を設けている場合があります。制度の有無や対象条件は地域によって異なるため、お住まいの市区町村へ確認してください。

無理のない範囲で家の周りを一周すると、普段は見過ごしている気になる箇所を見つけやすくなります。

家具の固定は、器具を取り付けることだけでなく、扉や通路、家の外まで含めて「倒れたら何が起きるか」を考えることが大切です。すべてを一度に整えようとせず、気になる場所から一つずつ見直していきます。

要介護の親がいる家は「動線」の防災が重要

母の車椅子と父の歩行器を日常的に使うわが家では、通れる幅があるかという問いが、常に部屋のレイアウトの基準になっています。

地震対策を考えたとき、この動線という視点が、一般的な防災アドバイスにはない、わが家固有の課題だと気づきました。

浩平が母の車椅子を押して通れる廊下と、通路をふさがない介護用品やバッグの置き場所

車椅子・歩行器で通れる幅を確保する

正直に言うと、私たちが経験した地震の最大震度は4で、大きな被害はありませんでした。震度5以上の揺れがどれほどのものか、体ではわかっていない部分があります。

気象庁の「震度階級関連解説表」では、震度5強で固定していない家具が倒れることがあり、震度6弱では固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもあるとされています。

同じ震度でも、揺れ方や家具の状態などによって被害は異なります。家具の固定と動線の確保を組み合わせ、揺れが収まったあとも周囲の安全を確認してから移動することが大切です。

経験がないからこそ、情報を頼りに、できる範囲で備えておく。それがわが家のスタンスです。「備えすぎるくらいでちょうどいい」という父の言葉が、そういうときに背中を押してくれます。

わが家で実際に測ってみると、廊下の幅は約82センチ、部屋の出入口は扉を開けた状態で約71センチでした。

母は、室内では外出用とは別の、横幅を抑えたコンパクトな車椅子を使っています。この車椅子なら、約71センチの出入口も余裕をもって通れます。

狭い廊下や出入口を通りやすく、トイレの手前まで移動して、そこから便器へ乗り移るときにも介助しやすいため、外出用と使い分けています。

必要な通路幅は、車椅子の大きさや介助の仕方によって異なります。一般的な数値だけで判断せず、普段使っている車椅子や歩行器で無理なく通れるか、方向を変えられるかを実際に確認しておくことが大切です。

介護用品の置き場は取り出しやすさ重視

介護に使う道具(替えのおむつ・清拭タオル・薬など)は、いざというときにすぐ取り出せる場所に置いておくことが重要です。しまいやすさより取り出しやすさを優先して、引き出しや扉の開け閉めが簡単な収納にしておくと、緊急時の対応がスムーズになります。

収納は、きれいに収まっているかだけでなく、必要なものを迷わず取り出せるかという視点で見直します。使用頻度の高いものは手が届きやすい位置に置き、本人や介助する人が無理なく使えるかを確かめておくと安心です。日常の介助で使いにくさを感じたら、その都度、置き場所や収納方法を調整していきます。

防災リュックや非常用品の置き場所も動線内で決める

非常用持ち出し袋や懐中電灯などは、日常の動線の中に置いておくことが、実際に持ち出せる備えにつながります。押し入れの奥やクローゼットの上段は、いざというときに取り出す時間がかかります。

置き場所は玄関だけに決めず、家の造りと家族の動線に合わせて考えます。わが家の玄関は、車椅子や歩行器の出し入れ動線と重なり、広くないため、持ち出し袋は玄関の近く・寝室・車に分けて置いています。

日中・就寝中・外出時のどの場面でも近くの備えを使えるようにし、家族で置き場所を共有しています。

防災用品を置くことで、かえって車椅子や歩行器の通行を妨げないようにすることも大切です。置き場所を決めたあとは、普段の移動や介助の邪魔にならないかを確認し、必要に応じて調整します。

停電時の夜間対策まで整えておく

夜間に停電すると、足元や通路の状況が見えにくくなります。両親が夜中にトイレへ移動することのあるわが家では、停電時の灯りを確保し、寝室からトイレまで動きやすくしておくことが大切です。

夜の停電に備えた廊下の足元灯と、枕元の懐中電灯・ランタン

停電時自動点灯ライト・懐中電灯・ランタンを使い分ける

停電時の灯りは、用途に合わせて使い分けます。寝室からトイレまでの動線には、停電を感知して自動で点灯するタイプのライトがあると、暗闇の中で灯りを探す負担を減らせます。

懐中電灯は手に持って周囲を確認するときに、ランタンは置いた場所の周辺を広く照らすときに役立ちます。

枕元には、手を伸ばせば届く場所に懐中電灯を置いています。

さらに、寝室の出入口からトイレ前、廊下、玄関までの1階の動線には、人を感知して点灯するライトを配置しています。停電時には自動で点灯し、コンセントから外すと懐中電灯としても使えるタイプです。

父が夜中にトイレへ行くときにも毎晩役立っています。防災のために用意したものが日常でも使われ、いざというときにも迷わず使える状態が、わが家の目指す備えの形です。

通電火災対策として感震ブレーカーを検討する

消防庁の解説ページでは、地震火災について、地震直後だけでなく、停電後の復電時など、時間が経ってから起こることもあり、電気に起因する火災が特に多いと説明しています。こうした電気火災への備えの一つが、感震ブレーカーです。

感震ブレーカーは、一定以上の揺れを感知すると、自動で電気を遮断する装置です。分電盤タイプ・コンセントタイプ・簡易タイプなどがあり、遮断する範囲や電気工事の要否が異なります。

自宅の設備や家族の生活に合う種類を確認し、必要に応じて電気工事業者などへ相談すると安心です。自治体によっては設置費用の補助を受けられる場合があるため、お住まいの市区町村へ確認してください。

家全体の電気を遮断するタイプでは室内の照明も消えるため、停電時自動点灯ライトや懐中電灯と合わせて備えておくことが大切です。

夜のトイレ移動を想定して試しておく

まず明るい時間に、寝室からトイレまでの障害物や段差、扉の開け方を確認します。暗くなってからは、人感ライトや懐中電灯を実際に使い、足元や通路を十分に照らせるか、扉の開閉や介助の妨げにならないかを確かめます。

暗闇を再現するために、目をつぶったり、足元が見えない状態で歩いたりする必要はありません。

介助が必要な家族と確認するときは、普段と同じように介助する人が付き添います。光が届きにくい場所や移動しにくい場所が見つかったら、物の位置やライトの配置を見直します。

まとめ|家の中の安全を整えることが、家族を守る地震対策の第一歩

地震への備えでは、避難や持ち出し品の準備だけでなく、まず家の中でけがをする危険を減らすことが大切です。

家具の配置を見直す、出入口や通路をふさがないようにする、寝室に倒れてきそうな家具がないか確認するなど、身近なところから始められる対策もあります。

家具の固定、介護が必要な両親のための動線確保、停電時の灯りの準備。すべてを一度に整えようとすると負担が大きくなります。寝室や出入口、普段使う通路など、優先する場所を決めて少しずつ進めていくことが大切です。

まずは、今夜眠る場所の周りを見回し、寝ている場所へ倒れたり落ちたりするものがないか、出入口がふさがれないかを確認してみてください。気になる場所が一つ見つかったら、できる対策から始めることが次の一歩につながります。

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この記事を書いた人

遥のアバター 遥 防災備蓄収納2級プランナー

高齢の両親と暮らしながら、夫の浩平とともに、毎日の暮らしの延長で続けられる防災を実践しています。備蓄や収納、介護が必要な家族との備えについて、わが家で実際に行っている工夫や取り組みをお伝えしています。

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