防災リュックを買ったはいいけれど、本当にこれで大丈夫なのかな、と不安になったことはありませんか。
わが家も以前、家にあるリュックに基本的なものを詰めて玄関に置いていた時期がありました。
でも改めて考えてみると、よく見かける「防災グッズの必要最低限リスト」は、一般的な家庭を想定したものがほとんどです。介護が必要な母と父がいるわが家には、そのまま当てはまらないものも多くありました。
災害が発生してから外部の支援が届くまでの間、まず自分たちで乗り越えなければならない時間があります。
内閣府の資料では、発生から72時間は人命救助が最優先とされており、物資の調達や輸送が普段のようにはいかない時間帯です。この72時間を自力で乗り越えるための備えが、防災セットの基本的な考え方です。
ただし、72時間後に必ず支援が届くとは限りません。持ち出し品は安全に運べる量にし、在宅用の水や食料は最低3日分、できれば1週間分を目安に備えます。
この記事では、わが家が実際に見直した経験をもとに、「誰のために、何を、どれだけ」備えるかの考え方を整理していきます。
72時間の備えは「量」より先に「誰のための備えか」を決める
防災の備えを考えるとき、最初に「何を入れるか」から始めていませんか。わが家はずっとそうでした。でも本当に必要だったのは、「誰のための備えか」を先に決めることでした。

一般的なリストをそのままわが家に当てはめない
市販の防災セット商品や一般的に紹介される防災グッズリストは、一般的な家庭を想定した内容が基本です。
食料のカロリー量、水の量、エマージェンシーアルミシートや簡易ブランケットの枚数…どれも介護や持病のない大人を想定したものが多く含まれています。
わが家の場合、80代の両親はそれぞれ体の動きに制限があります。いざ避難するとなれば、母は車椅子、父は歩行器が必要です。荷物を自分で持つことはできません。
市販のセット商品をそのまま買って「4人分そろえた」と思っていても、誰が何を持って、どうやって動くかまで考えていなければ、備えは完成しないのです。
「一般的なリストをそのまま使わない」ことが、介護のある家庭の備えの出発点でした。
50代・60代は持てる重さを基準にする
備えを考えるとき、「何を入れるか」と同時に「どれだけ持てるか」を決めておくことが大切です。
わが家では、防災リュックは実際に背負って、両親を介助しながら安全に動ける重さを基準に考えます。
50代・60代になると体力の変化もあります。私自身も腰に少し不安があるため、重さだけでなく、背負ったときの負担や動きやすさを確かめることを大切にしています。
「理想の中身リスト」をそのまま詰め込んで持てない重さになってしまうくらいなら、持てる重さに絞って確実に動ける備えにする方がずっと大切です。中身の数より、動けることを優先する。これがわが家の基準です。
高齢の親の分は家族分担で考える
わが家では、父と母の荷物は「両親の共有袋」として1つにまとめています。父も母もそれぞれ自分でリュックを背負うことができないため、浩平か私が持ち出す前提で準備しています。
家族4人分の荷物を「誰が持つか」まで決めておかないと、避難のときに混乱します。浩平のリュック、私のリュック、そして両親の共有袋。この3つに役割を分けて準備することが、わが家の基本の考え方です。
防災リュックは「背負って動ける」が正解
防災リュックで大切なのは、中身の豊富さより「実際にその重さで動けるかどうか」です。わが家で見直したとき、最初に手放したのは「使うかもしれない」という不安から詰め込んでいたものでした。

容量の目安と重さの目安をセットで決める
防災リュックの容量は、持ち出す必要があるものと、背負って安全に動ける重さを合わせて考えます。大きなリュックには多くのものが入りますが、空いている分まで詰める必要はありません。わが家では、両親の介助を妨げないことを優先します。
リュックに収まっていても、背負うと腰に負担がかかったり、介助の動きを妨げたりするなら、中身の見直しが必要です。「リュックに入る分だけ詰める」ではなく「介助しながら安全に動ける重さに収まる中身を選ぶ」の順番で考えます。
セット商品の中身を見直して減らす勇気を持つ
市販の防災セット商品は一見便利ですが、「すべてが自分に合っている」わけではありません。中を確認してみると、使わなそうなものや、すでに別で持っているものが混じっていることも少なくないそうです。
大切なのは「セットのまま使う」のではなく、家族の状況に合わせて中身を入れ替えることです。
セット商品は便利な出発点にはなりますが、そこで終わりにしないことが肝心です。「これでいい」ではなく「自分たちに合っているか」を確認する目で見直すことが、備えを本物にするための一歩です。
玄関まわりの置き場所まで決めて準備完了
どんなに中身を整えても、いざというときに取り出せる場所に置いていなければ意味がありません。「どこに何を置くか」まで決めておくことも備えの一部です。
災害はいつ、どんな状況で起きるかわかりません。「あの場所に置いてある」と決めていても、状況によってはそこに取りに行けないこともあります。
外出中に備える防災ポーチと季節対策を分けて考える
防災の備えは「家にいるとき」だけではありません。私が外出中に災害が起きる可能性も十分あります。防災リュックとは別に、外出時の備えを小さくまとめておく習慣が、わが家でも少しずつ定着してきました。

防災ポーチや防災ボトルは最低限+自分用にそろえる
外出先で災害に遭ったとき、防災リュックは手元にありません。そのために持ち歩く小さな備えが「防災ポーチ」や「防災ボトル」です。ポーチでもボトルでも、普段使いのバッグに無理なく入るものを選ぶのが続けるコツです。
中身の基本は、最低限の必需品(水・携帯食料・充電グッズ・マスクなど)です。そこに「自分に必要なもの」を足してそろえていきます。たとえば私の場合、眼鏡の予備や、腰まわりに負担がかかったときのための湿布を入れています。
暑さ・寒さ対策は季節ごとに入れ替える
防災ポーチも防災リュックも、季節によって中身を一部入れ替えることが大切です。夏に必要なものと冬に必要なものは違います。
夏なら、水に溶かして使う経口補水用の粉末や冷感グッズ、冬なら使い捨てカイロや保温シート。経口補水液には、そのまま摂れるゼリータイプもあります。
経口補水液は普段の水分補給用ではなく、脱水症のときに水分と電解質を補うためのものです。粉末は、製品に記載された量の飲料水に溶かして使います。
製品表示を読み、どのような脱水状態のときに使うものか、摂取方法や目安量を確認します。ナトリウムやカリウムなどの摂取制限がある場合は、あらかじめ医師に相談してください。
わが家では年2回、台風シーズン前と年末に中身を見直すタイミングをつくっています。このタイミングは、マイタイムラインの見直しと合わせて行うようにしてから、習慣として定着してきました。
普段使いバッグに合わせて無理なく続ける
防災ポーチは「持ち歩けなければ意味がない」です。重すぎたり大きすぎたりすると、結局バッグに入れるのが億劫になります。
自分がふだん使っているバッグに無理なく入るサイズ・重さにすることが、続ける秘訣です。コンパクトにまとめることを優先し、防災リュックと役割を分けて考えると、何を入れるかも整理しやすくなります。
高齢の親の防災グッズは「いつもの暮らし」から選ぶ
両親の備えを考えるとき、「一般的なリスト」では足りないと気づきました。薬やおむつなど、日常を支えているものがそのまま避難時の必需品になります。高齢の親がいる家庭では、一人ひとりの生活に合わせた備えが必要になるのが特徴です。

入れ歯・補聴器・排泄・睡眠の困りごとを優先する
高齢の親のための防災グッズは、一般的な防災リストには載っていないものが多くあります。
父と母に共通して必要なのは薬とお薬手帳、おむつです。加えて、入れ歯や補聴器を使っている高齢者の場合、これらが避難中にないと食事も会話もままなりません。
避難所での生活は慣れない環境でストレスもかかるため、睡眠の質が落ちやすい高齢者には耳栓やアイマスクも役立つとされています。
高齢の親が困りそうなことを先に洗い出して、一つひとつ備えていくことが、親のための防災グッズの正しい考え方です。
100均や介護用品を組み合わせる
高齢者向けのグッズはすべて専門店で揃える必要はありません。100均には携帯用の薬ケースや小分け袋など、備蓄や持ち出しに役立つものが多くあります。
介護用品として日常的に使っているものも、そのまま防災の備えになります。おむつや清拭シートは、日頃から使っているものを多めにストックしておく感覚で考えると、管理が楽になります。
「特別な防災グッズを揃える」のではなく「日常の延長として備える」という発想が、続けるためのコツです。
家族で実際に使ってみて調整する
どんなに備えを整えても、実際に使ったことがなければいざというときに動けません。浩平はよく「試してみて初めてわかることがある」と言います。
たとえばポータブル電源のスイッチや操作方法、防災グッズの取り出し位置など、家族全員が迷わず使える状態にしておくことが大切です。年に一度でも「実際にやってみる」場を設けておくと、いざというときの迷いがぐっと減ります。
まとめ|「誰のために、何を、どれだけ」を決めることが72時間の備えの出発点
72時間の備えは、公的な備蓄の目安を基本に、家族構成や健康状態、持ち運べる重さに合わせて調整します。大切なのは、実際に動ける形にしておくことです。
防災の備えは、量をそろえる前に、「誰が、何を、どう使うか」を決めておくことが大切です。
わが家では、浩平のリュック、私のリュック、そして両親の共有袋の3つを基本単位として考えています。
リュックは背負って動ける重さに収め、中身は家族の日常に合ったものを優先する。外出時の防災ポーチ、季節に合わせた中身の見直し、置き場所の決め方まで整えて、ようやく「備えができている」と言えるのだと実感しています。
「とりあえず買った」で終わりにせず、「実際に使える状態か」まで確認する。そのひと手間が、いざというときに家族を守る力になります。

